2009年6月14日日曜日

「このままオタクが増え続ければ日本人は道を誤る」(久間十義)

今朝の日経文化欄で作家の久間十義が大切なことを言っている。オタクたちの「萌え」志向や世界観が世の中で支配的になれば、私たちはますます衰弱して、リアリズムが貫徹する他国の人々に軽んじられることになるという。メモ:
  1. 私はかねがね、オタクや腐女子と呼ばれるアニメやゲーム漬けの若者たちが増殖することに、かすかな懸念を抱いてきた。
  2. 私たちは小説や批評を読むことによって、生活の真実を知り、また生きてゆくための規範や行動の基準のようなものを学ぶ。流行歌もそう。マンガやアニメもそう。ここにあるのは自らに何らかの役割を振り、その役割によってようやく自分たち得る私たちの姿である。
  3. こうした前提を認めれば、オタクや腐女子では「萌え」が判断基準になり、行動の準則になることは明瞭だろう。彼らはどっぷり浸かっているゲームやアニメの世界を生きて、いま、ここにある現実を生きようとしないように見える。その結果、ついついリセットできるゲーム感覚で国際折衝に臨み、外国人に鼻面を引き回されることだって起こりうる。
  4. 百年に一度と喧伝される経済危機の中、財政出動を決意した政府が、世界に冠たる日本のアニメ文化を発信するためアニメの箱物を作るという。「萌え」は老人により先取りされているらしいのだ。私の短絡や懸念と重ならないことを祈るばかりだ。

こういう発言をするのは、いまのニッポンでは勇気が要ることとなってしまった。この人は知らない作家だが、エライと思う。たしかにアニメが好きな内閣総理大臣による「アニメ箱物」プロジェクトは見苦しい。

4 件のコメント:

ざん さんのコメント...

たしかに今、アニメの殿堂をつくることはいささか時期が悪い。または、十分な支持を集められない。

しかし、産業としてみれば、市場も大きく、これからのネット事業との相性もいい。

フランスやドイツなどのEU圏で、または中国や韓国などのアジア、またアメリカで、日本のマンガやアニメが多くの支持を集めているという事実を鑑みれば、国がこの産業を応援するのもわからないではない。

 グローバリズムに伴って、世界の地域固有の文化が希薄になっていく中で、また、バブル崩壊から景気の落ち込みを繰り返す日本で、「アニメやゲーム」ではあるが、日本独自、といえる文化を発信できる日本の「若い世代」は評価されるべきだと思う。

麻生総理がアニメ好きかについて、メディアが騒ぐだけで、本当の所はわからない。
ただ、理解はあるのかもしれない。
アニメの箱物もそこまで悪いものではないのではないだろうか。悪いのはタイミングである。

匿名 さんのコメント...

アイデア自身は安倍総理のころのものなんだそうですね。景気対策で金を使わなきゃならないから、便乗したってところなんじゃないですか。

ヨーロッパの若い世代がとくに日本の漫画を熱心に読んでいることは事実なんですけど、さて、これが日本独自の文化と胸を張って言えるほどのものかとか、サブカルをお上が支援するってなんかおかしくないかとか、疑問がどうも消えない。自民党の河野太郎議員も強く疑問視してます。箱だけ作ってあとの運営は勝手にやってくれでは、先が見えてますから。

私なんかは、日本のアニメや漫画は世界に冠たるとまでは言えないだろうし、言うべきでもないと思ってます。怖いのは、日本の若い世代が、なんとなーく、日本の漫画ってすごいよねと信じてしまうことじゃないでしょうか。いや、ある意味ではすごいんですが、でも世界にはもっと強烈なものがいくらでもあるということも知らなきゃならない。自国と他国を比較する感覚のほうが、ずっと重要です。

Unknown さんのコメント...

世界に冠たるニッポンの娯楽といえば、やっぱりパチンコかな〜。なんせ10兆円産業にまで発展しているし。

でもパチンコやっている人は、そんなに自分たちがカッコイイとは思ってない。パチンコの殿堂も造られない。分限をわきまえている。それがオタクとの違い。

マンガはこそこそと読むもんなんですよ。

匿名 さんのコメント...

ちょっと気になったのでコメントをさせていただきます。

この久間氏の危惧は何も「萌え」に限らずに、受け取った価値観を現実と照らし合わせて考えよ、と見てとれますね。
アニメやゲームに限らず、映画、音楽、小説や批評等にもリアリティも何もない、下らないものは数知れませんし・・・。
そういったものばかりにどっぷり浸かるのは、あまり良いことではないでしょう。

ただ、アニメ=萌えだけ、という感じがとれて少し気になりますね。例えば、鉄腕アトムを初めとして、ああいった誇るべき文化というのはもっと世界に発信してもいいのではないのでしょうか?最近でも、深くておもしろい価値ある作品は色々ありますし。ただ、そこに、時折「萌え」が追加されているだけです。

フランスでは漫画の博物館が建った、と聞きますし、日本も特化分野でもっとアピールしてもいいと思います。
まあ、今箱物を建てるにはタイミングが悪いですが。